プラモデル 基礎から学ぶ失敗しない塗装方法 エアブラシ編 徹底解説

今までにプラモデルを作ったことがあり、筆塗りや缶スプレーなどで塗装をやったことがある人は多いと思いますが、エアブラシ塗装については知っていても、敷居が高く感じてしまってやったことの無い人も多いのではないでしょうか。

たしかに、専用の道具を色々と揃える必要がありますし、コンプレッサーやエアブラシは見たり聞いたりしたことはあっても、実際に扱えるのかどうか不安な事だらけですよね。

そこで今回は実際にエアブラシを使ってプラモの塗装までやっているスタッフが、エアブラシ塗装の方法について解説をしていきます。

スタッフ自身もエアブラシ塗装でいろいろと失敗やトラブルを繰り返して今日に至りますので、それらの経験に基づいて対処方法なども交えて解説していきますので、是非最後までご覧いただき、エアブラシ塗装に興味を持って頂けたら幸いです。

 

目次

1.エアブラシ塗装について


エアブラシ塗装を簡単に言いますと、コンプレッサーで空気を圧縮して、エアブラシ(ハンドピース)でその圧縮された空気と塗料を一緒に吹き出し塗装を行っていく塗装方法になります。

エアブラシ塗装は空気の吹き出し量と塗料の吐出し量を任意にコントロールすることが出来るため、筆塗りや缶スプレーでは再現できないグラデーション塗装など、エアブラシだから再現できる様々な塗装を行うことができます。

プラモデルの雑誌などに掲載されている作例や、展示会などで飾られている作品のほとんどはエアブラシ塗装で塗装された物になり、エアブラシ塗装をメインの塗装方法としているモデラーさんはかなりいらっしゃいます。

 

 

2.エアブラシ塗装に使う道具

エアブラシ塗装を行う際に必要な道具や、あると便利な道具をご紹介します。

2-1.エアブラシ


塗料を吹き付ける道具でハンドピースとも言います。
操作方式の違いや吹出口の大きさの違いなどで複数種類が存在しますがそれについては4-1で詳しく解説しています。

 

2-2.コンプレッサー


エアブラシから吹き出す圧縮した空気を生成する道具です。
写真は持ち運びにも便利な小型のものですが、出力のでかい据え置き型のものなど様々な種類があります。

代表的な模型向けのコンプレッサー


タミヤ スプレーワークHG コンプレッサーレボII
最大圧力:約0.11MPa(約1.1kgf/cm2)
空気吐出量:毎分20リットル
作動音量:56db

エアブラシ作業には十分は最大圧力0.11MPaと、毎分20リットルの空気吐出量で安定したエアブラシ塗装が可能です。重量も1.2Kgのため、使用しない場合は収納しておく事も可能です。振動対策の防振マットも付属しています。

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タミヤ スプレーワーク パワーコンプレッサー
最大圧力:約0.4MPa(60PSI)
空気吐出量:毎分9/12リットル(50/60Hz、0.2MPa)
作動音量:48db

同社の「スプレーワーク HG コンプレッサーレボ II」に比べ、最大圧力が0.4MPaもあるため、大きな面積への塗装などにも十分な威力を発揮します。搭載されているエアレギュレーターを使用すれば圧力調整も可能なため、圧力を落としての細吹きなどにも対応が可能です。エアブラシを置くスタンド部分には電源スイッチが連動しており、エアブラシを置いてある際には自動で電源が切れる仕様になっています。

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Mr.リニアコンプレッサーL5
最大圧力:約0.12MPa(60PSI)
空気吐出量:毎分5.27リットル(0.05MPa)
作動音量:50db

リニア駆動方式を採用した模型用コンプレッサーのスタンダード機です。従来のクランクシャフトやモーターを使用しない、電磁石を利用したリニア駆動のピストンの採用により静音性と安定性に優れ、長時間の連続運転も可能です。

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Mr.リニアコンプレッサーL7
最大圧力:約0.15MPa
空気吐出量:毎分7リットル(0.05MPa)
作動音量:55db

L5と同様にリニア駆動方式を採用したコンプレッサーになります。L5よりも最大圧力と空気吐出し量が高いため、広い範囲の塗装や口径のでかいエアブラシでも十分な塗装能力を発揮します。

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ちなみに写真のコンプレッサーは以下の性能となります。
ホビーコンプレッサー HCP-100
最大圧力:約0.17MPa
空気吐出量:毎分10.5リットル(0.05MPa)
作動音量:50db

 
コンプレッサーの機種によっては連続動作時間が設けられている物があります。
連続動作はコンプレッサーが空気を圧縮するために可動している時間をさすため、一定圧力まで上がると動作を停止する機種については、定められた動作時間を越えても動作に支障が無いものもあります。(それでもある程度動作させたら休ませる必要はあります)
逆に、ずっと圧縮動作を続けているコンプレッサーに関しては、連続作動時間を超えると故障の原因になる場合もありますので、時間を意識して使用して頂いたほうがよろしいかと思います。ちなみに、Mr.リニアコンプレッサーは長時間の連続可動をメーカーがセールスポイントにしていることもあり、愛用しているユーザーも多いコンプレッサーです。

 

2-3.塗装ブース


エアブラシで塗装したさいに発生する塗料の粒子を含んだ粉塵や、余分な塗料の吹き付けを受けるためのブースになります。
各社からファンを搭載した専用の物が販売されていますが、写真のようなダンボールの中に新聞紙を丸めた物を詰めた簡易的な物でも代用はできます。

塗料を含んだ粉塵には体に有害な溶剤なども含まれていますので、塗装ブースの使用や、マスクの着用をおすすめします。

代表的な塗装ブース


スプレーワーク ペインティングブースII(ツインファン)

前面パネルの4ヶ所にフィルターを設置、もっともエアブラシを受けやすい中心部はファンに到達するまでにフィルターを3回通過する構造になっているため、フィルターが目詰まりを起こしても吸引力が低下しにくくなっています。

写真はファンが2基搭載されたモデルになり、ファンが1基のシングルファンもモデルも販売されています。ツインファンのモデルであれば大容量の吸引力で缶スプレーにも対応可能です。

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Mr.スーパーブース コンパクト

コンパクトサイズで作業台に設置してもスペースを大きく専有せず、2段構えのフィルターで塗料の粉をキャッチ。フィルターも交換可能な設計のため、フィルターがヨゴレたら交換対応が可能です。

また、同社の「Mr.スーパーブース」からの変更点として、排気ホースの出口が上に変更になったため、左右どちらへも排気ホースを向けることが可能になっています。

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2-4.塗料や溶剤


塗装を行う上での主役とも言える塗料と溶剤です。塗料や溶剤は複数の種類がありますが、エアブラシであればほとんどの物が使用可能です。

ラッカー塗料
乾燥後の塗膜の強さ、艶や発色の良さなどでもっとも人気のある塗料です。シンナー臭がかなり強いのでマスクの着用や換気は必須です。

乾燥の早さ 早い
発色 艶が共にいい
塗料の伸び 伸びがよく筆でもムラが出にくい
塗膜の強さ 3種類の中で一番強い
塗料の食いつき 食いつきがいい
臭い シンナー臭が強い

水性アクリル塗料
発色や塗膜の強さなど、ラッカーよりも劣る部分はありますが、シンナー臭いが駄目な方にはおすすめ。乾燥前であれば使用した筆や道具を水で洗うことも可能。

乾燥の早さ 遅い
発色 発色や艶はラッカーよりも劣る
つや消しはの仕上がりがキレイ
塗料の伸び 伸びが悪く筆塗り時にムラが出やすい
塗膜の強さ それほど強くない
食いつき あまり良くない
臭い それほどきつくない

エナメル塗料
塗装後の細かな部分の筆塗りや、ウェザリングやウォッシングと言った汚し塗装によく用いられている塗料です。塗料の伸びがよいので筆塗りにもおすすめ。

乾燥の早さ 3種類の中で1番遅い
発色 発色や光沢がいい
メタリックカラーの金属感がとくにいい
塗料の伸び 伸びがよく、筆塗りでのムラがでにくい
塗膜の強さ 弱い
食いつき あまり良くない
臭い 灯油のような臭い

塗料にはそれぞれ一長一短があります。目的や用途に応じて塗料を使い分けることで塗装作業を効率よく行うことができます。

塗料については [プラモデル講座]もう迷わない! 模型で使う塗料の種類と特徴 -塗装1- にて詳しく解説しておりますので、こちらの記事も合わせてご覧ください。

 

2-5.小物類


塗料の希釈や調色を行う際に使用する塗料皿です。金属製の物や樹脂製の物など様々な物がありますので、使いやすい物を探してみるのもいいかもしれません。


ティッシュペーパーは塗料の拭き取りや、クリーニングの際にあると便利です。キッチンペーパーなどでも問題はありませんが、少し割高ですが写真のキムワイプであればティッシュのような毛羽立ちや繊維は落ちないのでおすすめです。


溶剤を扱いますので汚れ防止も兼ねた手袋。
パーツをつまんで固定できる先端にクリップの付いた持ち手。
一番下は塗料を撹拌する撹拌棒になります。

 

3.塗装前の下準備


いざ塗装を行うにしてもいきなり塗装を行えるわけではなく、キレイに塗装を行うには事前に下準備を行っておく必要があります。

3-1.表面の処理をしっかりとやっておく


塗装を行う際には各パーツの表面の処理をしっかりと行っておく必要があります。エアブラシ塗装の場合は特に缶スプレー塗装などとは異なり、塗料の塗膜は薄くなりますので表面に傷やデコボコがあるとかなり目立ちます。

そのため、最初の組立て段階から各パーツの表面処理をある程度行いながら組み立てを進めていき、仮組みが出来た時点でサーフェイサーを吹いて傷のチェックを行うことをおすすめします。

3-2.サーフェイサーを吹いて表面をチェック

2-1でも触れたサーフェイサーですが、このサーフェイサーは主には塗装前に塗布することで塗料の食いつきを良くする役目などがありますが、もう一つ、傷のチェックや浅い傷を埋める効果もあります。

一般的なサーフェイサーの色はグレー(灰色)となり。不透明なつやの無いグレーを吹くことで表面の陰影がはっきりするため傷などが見えやすくなってきます。


写真はプラ板に#400のヤスリとデザインナイフで傷をつけて半分だけサーフェイサー(Mr.サーフェイサー1000)を吹いてみものです。
白い方はそんなに傷が目立っていませんが、グレーのサーフェイサーを吹いた方は傷が目だって見えます。

ある程度の擦り傷であればサーフェイサーを吹けば傷が埋まってくれますが、サーフェイサーを吹いても消えない傷については表面の処理をやり直したほうが作品もキレイに仕上がります。

サーフェイサーでどの程度ヤスリの傷が消えるのか
写真のようにそれぞれにヤスリで傷をつけて、サーフェイサー(Mr.サーフェイサー1000)を吹いてみました。

一番右はデザインナイフで傷つけたものになります。
 

#400で傷をつけた物です。サーフェイサーを吹いても傷が見える状態で残っています。
 
#600で傷をつけた物です。#400程ではないですが、光の加減で傷の有無がわかる感じです。
 
#800で傷をつけた物ですが、角度によって傷があったのがわかるレベルです。
 
#1000で傷をつけたものはほとんどわからない状態になりました。
切削力を考えると削る際には#400ぐらいが使いやすい所ですが、そのままでは表面に跡が残ってしまう可能性があるため、#400などで作業して最終的に#1000台で表面を処理してあげたほうが塗装には向いています。

3-3.サーフェイサーで見つかった傷やヨゴレを処理する


サーフェイサーを吹いてみて傷が見つかった時や、写真のように指紋やヨゴレが付いてしまった場合には、もう一度表面の処理を行うことをおすすめします。


しっかりと乾燥させてから、該当の部分をヤスリ等で削って表面の処理を行います。
ホコリやゴミはピンセットなどで取っても跡が残ってしまいますので、乾燥後にヤスリで削って再度表面処理をしてあげて下さい。


小さい範囲であればその部分だけでも大丈夫ですが、範囲がでかい場合にはその面全体を処理してしまった方が早い場合もあります。

 

4.エアブラシの基本的な操作方法

 

4-1.エアブラシの種類

エアブラシ塗装を行う際に最も重要な道具がエアブラシ(ハンドピース)になります。操作のアクションの違いで以下のような3タイプに別れ、その中でも吹出口(口径)の違いで製品が別れてきます。


シングルアクションタイプ
メインレバーはエアーの吹き出しをコントロールして、塗料の吹き出し量は後ろのネジで行います
塗料の吹き出し量を後部のネジだけでコントロールするので塗装時の操作は比較的楽ですが、ネジを回してあると塗料が出続けているため、吹付けが終わるごとに後部のネジを戻して塗料が出るのを止める必要があります。


ダブルアクションタイプ
メインレバーでエアーの吹き出し量と塗料の吹き出し量の両方をコントロールするタイプです。 
メインレバーを押してエアーを出して、引いて塗料を吹き付けるという押して引くの2段階で塗料が吹き出します。
後部のネジを回す事で塗料の最大吹き出し量を調整することも可能です。また、シングルのようにいちいち後部のネジを回して塗料を止める必要はありません。


トリガータイプ
トリガーを引くことでエアーと塗料の両方をコントロールするタイプです
ダブルとは違ってトリガーを引くだけで塗装が可能で、トリガーの引き加減で塗料の量を調整できます。
後部のネジを回す事で塗料の最大吹き出し量を調整することも可能です。

エアブラシの口径はどれを選べばいいのか
エアブラシには吹出口の大きさ(口径)が複数存在しています。主には”0.2mm””0.3mm””0.5mm”となりますが、一般的には使用用途により口径を変える方が多いです。
 
0.2mm
小さい範囲や微細部分への塗装など、精密な塗装に向いています
 
0.3mm
様々な塗装に対応できるもっとも汎用性の高い一般的な口径です。最初に購入するならこの口径がおすすめです。
 
0.5mm
大きな範囲を塗るのに適した口径です。 下地塗装やトップコート吹きなどの範囲のでかい塗装に向いています

 

4-2.ダブルアクションタイプのエアブラシの操作方法

ここからは「ダブルアクションタイプ」のエアブラシの操作方法について説明していきます。
4-1で紹介したように3種類のエアブラシが販売されていますが、ダブルアクションタイプがもっともポピュラーなエアブラシのタイプになります。


各部の名称になります。

塗料カップ
塗料を入れる場所になります。製品によって容量やカップの形状(固定式や取り外し式)が異なりますが、機能的には全て同じです。

メインレバー
塗料の吹き出しやエアーの吹き出しをコントロールするレバーになります。

ニードルストッパー
塗料の最大吹き出し量を調整するネジになります。


エアブラシを持った状態です。(実際には下にエアホースがつながっています)
持ち方については写真のようにメインレバーを人差し指で押す人や、親指で押すなど様々ですので、自分にあった持ち方を探して見て下さい。


メインレバーの操作方法になります。
押すことでエアーの吹き出し量を調整、レバーを引くことで塗料の吹き出し量を調整できます。


エアブラシの後部にあるネジをニードルストッパーと言い、この部分を回す事で塗料の最大吹き出し量を調整できます。
この部分を回すとメインレバーの引ける量も少なくなり、結果的に吹き出し量のコントロールができますので、メインレバーでの調整が難しいようであれば後ろのネジで塗料の吹き出し量をコントロールする事も可能です。


塗料カップのキャップを外したところです。この部分に塗料を入れて使用します。

 

5.エアブラシ塗装の基本

5-1.塗装の前にサーフェイサーで下地をつくる

塗装を行う際に、いきなりパーツを塗るのではなく、その前段階としてサーフェイサーを吹いて下地を作ります2-2でサーフェイサーを吹いての傷のチェックについて記述をしましたが、ここでサーフェイサーを吹くことのメリットについて触れていきます。

サーフェイサーを吹くメリット
・塗料の食いつきが良くなり、剥がれにくくなる。
・グレーのカラーで陰影がはっきりして傷がわかりやすくなる。
・やすり傷などを消してくれる。
・隠蔽力が高いので下地の色を消して全体を均一な色味にしてくれる。

ほとんどが2-2でも触れている内容となりますが、最後の「隠蔽力が高いので下地の色を消して全体を均一な色味にしてくれる」について説明いたします。


飛行機や戦車などのスケールモデルではそこまでパーツの色が多彩ではありませんが、ガンプラでは最初からパーツが色分けされてるため、素組の状態でもある程度色分けがされた状態で完成させることが出来ます。
塗装を行おうとした際にパーツの色が様々だと色味や濃淡がバラバラになってしまうため、一度サーフェイサーで下地を消して全体の色味を揃えてあげることで、その後の塗装作業を効率的に行うことができます。

また、隠蔽力が高いためしっかりと光を遮断してくれますので、完成後にライト等を当てて撮影した場合にでも、パーツが光で透けることなく撮影を行うことができます。

下地によって変わる色味

塗装を行う際、下地によってその上に塗る色の色味が変化してきます。
上の塗る色が暗い色の場合にはそこまで視覚的な影響は出ませんが、下の写真のように明るい色だと下地の影響をかなり受けます。

写真は左から下地が”黒色””灰色””白色”になります。上に塗ってあるのは同じ赤色になりますが、下地によってここまで色味が変わります。

 
逆に言えば、下地を変えることで違う色味を再現することが可能という事でもあるので、塗装の際には下地の色についても意識してみて下さい。

 

5-2.塗料の希釈具合を覚える

エアブラシで塗装を行う場合には塗料を溶剤を使って薄める(希釈)必要があり、ほとんどの塗料は”塗料1に対してうすめ液を1~2(1:1~2)”程度が一般的な希釈率と言われています。

実際には、慣れている人だとその都度ちゃんと1:1になるように計っているわけではなく、希釈しているカップ内の塗料の粘り具合など、その人なりの感覚で判断をしている方がほとんどですので、すぐに覚えるのは難しいかとは思いますが、やっているうちに分かってくるかと思いますので希釈の際には塗料の状態などを少し注視してみて下さい。

なお、塗装環境や塗装の方法により最適な希釈率は変わってきますので、その都度試し吹きをして塗料の希釈状態を確認して微調整をした方が良いかと思います。

希釈の割合を変えて実際に吹いてみました
希釈の割合を変えながら3パターン塗装してみました。左から右にかけて濃度が薄くなっていっています。
 
左は1:0.5程度の希釈です。濃度が濃いため吹付け時に塗料のダマがでてしまい、表面もざらついた感じです。
真ん中は1:1.5程度に希釈した状態で塗料も均一に塗布されました。
右が1:2.5程度の希釈した状態です。かなり水っぽい感じで、吹付け時にダマも出ていました。
 
このように希釈の状態については一度試しに吹いてみて確認すると一番分かりやすいかと思います。

 

5-3.塗装を薄く積み重ねていく

エアブラシで塗装を行う際には同じ場所を一気に塗るのではなく、薄く薄く何度も重ね塗りをしていくのが基本です。
同じ場所にずっと吹き付けていると塗料が溜まってきて塗料垂れの原因になりますので、薄く何度も塗り重ねるようにして下さい。


最初はさっと吹き付ける程度で大丈夫です。


エアブラシであればすぐに乾燥しますので、違う部分を塗装している間に最初に塗装した部分は乾燥しています。あとは同じことを繰り返して塗装を重ねていきます。

 
最後は塗装の薄い部分やムラになっている部分はないか確認して完了です。

 

5-4.塗装時には周囲の確認をしてマスクの着用も忘れずに

エアブラシで塗装を行う場合、塗装ブースなどを使用して排気を行っていても想像以上に周囲に塗料の粉や溶剤の匂いが拡がりますので、家族や同居人への配慮を心掛けるようにしてあげて下さい。

また、塗装する自分自身もマスクなどをして塗料の粉や粉塵を吸わないように注意しておいたほうがよろしいかと思います。実際、塗料の粉がどの程度体に悪いのか分からない部分ではありますが、決して体に良いものではありませんので、マスクの着用は忘れずに


3M 8000J 防じんマスク ヨドバシ・ドット・コム商品ページ
簡易的なマスクでもこういった口の周囲をしっかりと覆ってくれる物がおすすめです。


興研 7121R-03 取替え式 防塵マスク ヨドバシ・ドット・コム商品ページ
一番いいのは交換可能なフィルターの付いた防塵マスクですが、長時間塗装を行うのでなければ上記の簡易的な物でもよろしいかと思います。

 

6.実際に塗装してみよう!

ここからは実際に塗装作業の流れに沿って説明をしていきます。
エアブラシや塗装ブースなどを設置して塗装の準備ができたら、早速塗装作業に入っていきます。

6-1.サーフェイサーを吹いて下地作り

まずは塗装の下地となるサーフェイサーを吹き付けます。
サーフェイサーはエアブラシで吹き付ける瓶に入った物と、そのまま使える缶スプレータイプがありますが、個人的には仮組み時の傷チェックなどにも使う事のであれば、手軽に使える缶スプレータイプの方がおすすめです。


他の缶スプレーと同様に対象から20~30cm程度離して吹き付けます。感じとしては吹き付けるというよりも、塗料をふわっとのせていくようなイメージで少しづつ重ねていくとキレイに塗ることが出来ます。


サーフェイサーを吹く前に持ち手などにパーツを固定しておくと塗装がかなり楽になります。 サーフェイサーを吹き付ける際には組んだ状態で吹き付けてしまっても大丈夫ですが、股の部分や腕と体の間など、サーフェイサーが上手く塗布できない部分については写真のようにばらして塗装した方が楽です。


サーフェイサーの乾燥後にパーツを全てばらして、塗装する色ごとに分別しておきます。
上記で組んだ状態でサーフェイサーを吹くと記述しましたが、組んだ状態でサーフェイサーを吹けば、見えている部分と見えない部分が明確にわかりますので、塗装時に判別できて便利です。

サーフェイサーは必ず吹いたほうがいいの?
サーフェイサーを吹くメリットについては5-1で記述していますが、実際の所サーフェイサーは必ず吹かなければいけないのかどうか、結構意見が分かれる所ではあります。
 
サーフェイサーを吹くことによってサーフェイサーの層を作るわけですが、傷のチェックなどで何度も何度も吹いていれば層は厚くなっていき、これによって角の部分が丸くなったり、溝が浅くなったりすることもありますので、なるべくはサーフェイサーの使用回数は抑えたほうがいいのは事実です。
 
また、ラッカー系塗料のように溶剤の強い塗料であれば塗料自体がパーツの表面を溶かして食いつきますので、サーフェイサーを使用しなくてもある程度の食いつきを得ることも出来ます。
 
最終的には塗装を行う本人の判断によってきますので、どちらがいいのか実際に試してから判断していただいてもいいかと思います。

 

6-2.塗料の準備、希釈

塗料の希釈
塗装を行うために塗料を薄めて(希釈)いきます。
市販されている塗料はそのままではエアブラシでは使用できませんので、エアブラシでも使用できるように専用の溶剤を用いて薄めてあげる必要があります。

塗料の希釈については5-2で記述していますので、そちらを御覧ください。


塗料を薄めたあとはエアブラシのカップに塗料を入れます。これで塗装を行う準備が完了です。

6-3.塗料を吹き付ける!吹く時の注意点


では実際に塗料を吹き付けていってみましょう。

塗料を吹き付ける際には2点注意してほしい事柄があります。

1、いきなり塗料を吹き付けずに捨て吹きを行う。
2、塗料は一気に塗らずに薄く何度も塗り重ねていく。

まず1番の「いきなり塗料を吹き付けずに捨て吹きを行う」について、エアブラシで吹き付ける場合にはいきなりパーツを塗装するのではなく、関係のない場所に吹いてから塗装を行って下さい。
理由はエアブラシの先端に塗料が溜まってくる場合があり、吹付け時にこれらの塗料が飛ぶ可能性があるためです。


分かりやすくするため、少し薄めた塗料を先端に溜めてから吹き付けてみました。このようにダマになって塗料が飛び出てしまう可能性があるため、定期的に捨て吹きをやるように心がけてみて下さい。

2番めは5-3で記述している通りで、基本は薄く何度も塗り重ねていくようにします。イメージとしては色鉛筆で塗り絵をするように、細い線で何度も何度も行き来しながら最終的に全体を塗り終えるような感じです。

 

6-4.塗装する色を変更する

塗装の途中で塗る色を変更する場合にはカップに入っている塗料を捨て、エアブラシのクリーニングを行った上で新しい塗料に入れ替える必要があります。


まずエアブラシのカップ内に残っている塗料を捨てます。調色や他の色と混ぜていないようであれば、そのまま元の塗料瓶に戻してしまっても大丈夫です。


空になったカップ内に洗浄用の溶剤を入れてカップ内のクリーニングを行っていきます。


エアブラシの先端の部分を指で抑えた状態で、メインレバーを押してエアーを出すと空気が逆流した状態になります。この状態をうがいといい、クリーニングやカップ内の塗料の撹拌などの際に多用される行為です。

うがいをある程度行ったらカップ内の汚れた溶剤を廃棄して、再び洗浄用の溶剤を入れて、入れた溶剤がある程度透明になるまでこの行為を繰り返します。クリーニングが完了したら次の塗料を入れて塗装を行って下さい。

溜まった廃液の処理について
エアブラシで塗装をやっていると必ず出るものが塗料や溶剤の廃液になります。この廃液は油などと同じようにキッチンや流しで捨てるのはあまり好ましくありませんので、以下のような処理剤などを使用して廃棄するのをおすすめします。


カンペハピオ「残塗料処理剤」 ヨドバシ・ドット・コム商品ページ
1袋(30g)で400mlまで処理が可能。廃液の中に処理剤を入れてかき混ぜて放置するだけで固まるので後はそれを捨てるだけです。
ホームセンターやAMAZONなどの大手通販サイトで購入可能ですので、廃液は捨てずに溜めておいて、まとめての処理がおすすめです。

 

7.一つ上のテクニック-色の塗り分け方法-

塗装を行っていく中で必ず通る道が、これから説明するマスキングテープを使った色の塗り分け作業になります。少しめんどくさそうな作業ですが、これを行うことでキレイに塗り分けることができますのでチャレンジしてみて下さい。

7-1.マスキングテープで塗装してある部分を保護


前もって塗装済みのパーツで残したい塗装部分をマスキングテープを使って保護していきます。 マスキング作業には決まったやり方はありません。最終的に塗装したくない部分をしっかり保護できていれば大丈夫ですので色々試してみて下さい。

マスキング作業に使う道具ですが、カットするためのデザインナイフと共に爪楊枝があるといろいろと便利です。

色の塗り分けの順番
塗り分けを行う場合先にどの色を塗って、次にどの色を塗るのか前もってシミュレートしておくと作業が楽になります。
 

今回は背中のバックパックを塗り分けしていきますが、先に黒い部分を塗ってからマスキングをして、その後、白色で下地→赤色の順番で塗ることにしました。もちろんこの逆の順序でも間違いではありませんので、自分なりに塗装の順番や工程を考えてみて下さい。

 

7-2.吹き付ける時の注意点

マスキングしたパーツを塗装する際にはエアブラシの吹き付ける向きに注意をして下さい。


パーツの真上や、マスキングテープ側(青色の矢印)から吹き付けるのは問題ありませんが、塗装面からマスキングテープに向かって吹く(赤色の矢印)のは、マスキングテープの下に塗料が入り込む可能性があるためおすすめできません。

また、塗料を厚く吹きすぎると保護されている塗装面との間に段差が生まれてしまいますので、なるべくは薄く吹くように心掛けると失敗は減ります。

 

7-3.マスキングテープ剥がしは慎重に


塗装が終わったらマスキングテープを剥がしていきますが、剥がすタイミングは塗料が完全に乾燥する前に剥がすようにして、剥がす際には塗装面を傷つけないように注意をして下さい。

完全に乾燥する前に剥がす理由は、完全に乾燥してしまうとマスキングテープを剥がした際に乾燥した塗膜部分が一緒に剥がれてきてしまう可能性がありますので、マスキングテープは塗料が乾燥仕切る前に剥がすのがおすすめです。

 

8.塗装が終わったら必ずエアブラシのクリーニングを

塗装が終わったら最後はエアブラシのクリーニングを必ずやるようにして下さい。クリーニングせずに放置をすると、エアブラシ内に残った塗料が固まってしまい、動作に支障を起こす可能性があります

私がいつもやっているクリーニング方法をご紹介させて頂きますが、あくまで我流なやり方ではありますのでその点についてはあらかじめご了承下さい。


後部のバランサー部分を外して、内部のニードルを抜き取ります。
この際、ニードルを曲げてしまうと正常に動作しなくなりますので、取扱いには細心の注意を払って下さい。


ティッシュなどにクリーニングの溶剤を付けて、先程抜いたニードルをクリーニングします。
先端の部分は簡単に曲がってしまうので力の入れすぎには注意して下さい。


先端のニードルカバーとノズルカバーを外します。
先端を外す際には必ず上記のニードルを抜く作業を行ってから外すようにして下さい。


塗料皿などに洗浄用の溶剤を入れて、先程外した先端の部品やカップの蓋を漬け置き。その後綿棒やティッシュなどでクリーニングします。

これでクリーニングは全て完了しましたので、後は先程とは逆の工程で部品を戻していきます。 組立て完了後はニードルを数センチ程度後ろに引いて、先端部分をエアブラシ内に入れた状態で保管しておくのがおすすめです。

尚、エアブラシに付属する取扱説明書などにクリーニング方法や保管方法が記載されている物もありますので、一度取扱説明書を確認してみて下さい。

 

9.最後の仕上げはトップコートを吹いてコーティング


塗装が完了したら最終的に仕上げ用のトップコートを吹いて表面をコーティングしておきます。これで表面に透明な塗料の層が一つ追加されて、塗装面を傷などから守ってくれます。


今回は重量感を出したいのでクレオスの「プレミアムトップコート」のつや消しを使用しました。

 

10.完成! 素組と比べてみました

トップコートも吹き終わり、完成をしたので素組状態のものと比較をしてみました。


左が素組したもの、右が塗装を行ったものになります。
製品では塗り分けがされていない部分も塗装で塗り分けを行ってありますので、情報量がかなり増えています。


今回は、後ハメ加工や合わせ目消しは行わずに素組の状態で表面処理だけを行って塗装を行いました。目とおでこなどのセンサー部分はそのままシールを使用しています。

素組でもかなり色分けはされていますがやはり塗り分けできていない部分はありますので、そういった部分を塗装で塗り分けることで、完成度があがってよりカッコよく仕上げることが可能です。

今回塗装に使用した塗料について

今回使用した塗料は以下のとおりです。
 ・Mr.COLOR ガンダムカラー MSホワイト
 ・Mr.COLOR ガンダムカラー MSイエロー
 ・Mr.COLOR ガンダムカラー MSレッド
 ・Mr.COLOR ガンダムカラー MSグレー連邦系(ウイノーブラックを混ぜて使用)
 ・Mr.COLOR ガンダムカラー MSブルーZ系
 ・Mr.COLOR GX ウイノーブラック
 ・ガイアカラー EXホワイト
 ・タミヤ エナメル X-6 オレンジ
 ・タミヤ エナメル X-15 ライトグリーン
 ・タミヤ エナメル XF-3 フラットイエロー

 

まとめ

道具→塗料→組立てと来て今回はエアブラシ塗装について解説をしてみました。
エアブラシ塗装というと少し敷居が高いと感じられる方も多いかと思いますが、やってみると意外と難しいことはなく、逆に今までに出来なかったことが出るようになりさらにプラモデル作りが楽しく感じられるようになれます。

現に、自分も最初にエアブラシを購入したきっかけは、戦車模型に迷彩塗装をするためでしたが、その後はガンプラの塗装はもちろん。趣味の釣りで使うルアーやスプーンの塗装。時には100円ショップで透明なスマホケースを買ってきてオリジナルカラーに塗装をしたりと、当初の目的以外の部分でもエアブラシを活用して楽しんでいます。

塗装というと缶スプレーや筆塗りのイメージもありますが、個人的にはエアブラシに比べると、缶スプレーや筆塗りのほうが段違いで難しく感じます。逆に言うとエアブラシの方が簡単にそしてキレイに塗装ができますし、なにより見た目的にプロっぽく見えるのでおすすめです。

確かに初期費用がかかりますが、最近ではエアブラシとコンプレッサーのセットが7000円前後で販売もされていますので、是非これにきっかけにエアブラシ塗装を始めてみて頂ければ幸いです。

手放さなくてはならないプラモデル、模型はありませんか?

模型制作を楽しんでいますか?

もしさまざまな事情で手放さなくてはならない時がやって来てしまったら。
私達スタッフにも経験がありますが、プラモデルの製作スピードよりも購入スピードが上回れば日々お部屋や押入れ内にも積みプラが増えてしまいます。

ほどよい積プラは快適な製作環境でもありますが、日々増えていくプラモデルの管理や保管場所と同時にデカールの傷みや、外箱のつぶれなど時間の経過と共に起こるトラブルなど、悩ましい問題も増えていきます。

プラモ部屋を少し整理しよう。已む無い事情で片付けなくてはならなくなった時、是非カートイにお気軽にご相談下さい。

プラモデルを良く知るベテランの査定士が一つひとつに、しっかりとお値段を付けさせて頂きます。必ずしも高額査定になるものばかりではないのですが、貴重なキットをお探しの同じ趣味をお持ちの方々に、有効に活用して頂ける様に橋渡しをさせて頂いています。

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