カートイズミーティング & カートイワークスのコラボ企画は第 13回を迎えました。さてさて 13回目のテーマは、出来の良い姉を持ったばかりに不遇な扱いを受けた悲しい妹の物語です。不吉とされる 13回だからと言って人生相談のコラムに変わったのでは有りませんよ~ いつもと同じミニカーのお話ですのでご安心を!
実車ではブルーバードに限らず、近年ますます旧車の人気が高まっていますね。週末には各地で旧車系のイベントも増え、懐かしい車たちを目にする機会も増えているんじゃないでしょうか。そんな中、世の中の流行廃りに素直には従わない筆者が旧車界の不遇なあの子にスポットを当て、ミニカーや模型でご紹介していきます。さてさて出来の良い姉? 不遇なあの子!?っていったい誰のことでしょう。
目次
- 1 日産の看板娘
- 2 ミニカー界でも大人気の姉
- 3 今回のテーマは不遇の妹
- 4 和製アメリカンマッスル ブルーバードU
- 5 ミニカーの代名詞トミカのBluebird U
- 6 トミカの牙城を切り崩す チェリカ80
- 7 フル可動モデルのトミカ ダンディ
- 8 日本 ミニカーの至宝 モデルペットのブルU
- 9 レアな車種もラインナップ ダイヤペット
- 10 レアブランド!? アポロの小さなブルU
- 11 プラモデルのNIKO 1/40シリーズ
- 12 良キット 永大 1/24プラモデル
- 13 ヤマダから童友社へ ノスタルジックヒーローシリーズ
- 14 バンダイ 1/20 スケールカーコレクション
- 15 フル可動、充実のラインナップ バンダイの1/20 ブルU
- 16 満を持して登場のサメブルも効果なし!?
- 17 特徴的なフロントマスク 国産名車のサメブル
- 18 筆者が最初に所有した運命のブルーバードU1600
- 19 まとめ
日産の看板娘
出来が良い姉とは日産のブルーバード510です。510型はスーパーソニックラインと呼ばれたシャープなボディラインと、先進のセミトレーリングアーム式四輪独立サスペンションを得た日産の看板娘でした。米国ではトランザムレースに常勝し、ダットサンブランドを世界に定着させました。写真はBRE仕様にカスタムされたホットウィールのダットサン510です。
ミニカー界でも大人気の姉
世界的な名車として扱われる 510はデビューから 50年を経た現在でもミニカーのリリースが耐えません。つい最近では M2ブランドからボンネットが開閉出来る 510がリリースされました。ホットウィールからは 2ドアセダンとワゴンが発売されており、リリースのたびに争奪戦が展開される人気車種です。そんな出来の良い姉 510は今回のテーマでは有りません。
今回のテーマは不遇の妹
今回のテーマはその出来の良い姉 510の妹分である 610型ブルーバードUのお話です。1971年生まれの 610型はエンジンも足回りも姉の510と同じです。ボディラインはふくよかになり体重も少しだけ増えましたが、どうやらそれが不遇の原因らしいんです。出来の良い姉を持ったが故に不遇な扱いを受けた妹 610型ブルUが今回のテーマです。
和製アメリカンマッスル ブルーバードU
610型ブルーバードU、通称:ブルUは堅実な510より上級クラスを狙ってボディを大型化し、ふくよかな曲線でデザインされました。当事の国産車は1970年初頭にアメリカで流行ったマッスルカー的な抑揚のあるデザインが流行しており、ブルUもポンティアックGTOを小型化したような和製マッスルカーデザインでした。そんなブルUにはどんなミニカー/模型が存在したか見てみましょう。
ミニカーの代名詞トミカのBluebird U
トミカのブルUです。後方に赤い牽引フックが付いたものが黒箱時代のトミカで、それとそっくりなのは2000年代に復刻された6台セットの一員です。
ワイドホィールを履いたジール特注はチョイ悪的な魅力を醸しています。白いのは当コラム初回にも登場したカスタム品でアオシマ グラチャンのホィールに換装しています。
トミカの610は他にも多数存在しますが、その辺はトミカコレクションの神様方に譲ってここでは簡単に触れるだけにします。
トミカの牙城を切り崩す チェリカ80
ダイヤペットがトミカサイズに打って出たチェリカ80シリーズのブルUです。名前の由来の通りトミカより少し大きめの 80ミリサイズです。チェリカ80のブルUは伸びやかで実車より格好良いですが、顔が妙に大きいのが弱点です。
チェリカ80シリーズは同世代のケンメリスカイラインや二世代目マークⅡ、クジラクラウン、ギャランGTO、二世代目ローレルなど和製マッスルカーが揃う稀有なブランドでしたが、トミカの牙城を切り崩せずに消えて行きました。
フル可動モデルのトミカ ダンディ
トミカでも格上のダンディのブルUです。1/46と標準スケール (1/43) より僅かに小ぶりですが前後フード、左右ドアが開閉するフル可動モデルです。贅肉多めのボディラインまで含めて正確にスケールダウンされています。黄色いのはモデル末期にオーバーフェンダーと前後スポイラーでにわかレーシング仕様に仕立てられた一台です。盛大に売れ残り後日プレミアが付くという不人気モデルの王道コースを歩みました。
ダンディは標準スケールから外れているせいか、トミカより格上なのにトミカほどの人気が得られないでフェードアウトして行きました。510の格上を狙って失敗した 610と通じるものが有ります。
日本 ミニカーの至宝 モデルペットのブルU
お次はモデルペットのブルUです。スケール表記は1/42ですが実寸は1/40に近いです。日本のミニカー市場の基礎を作ったモデルペットですが、この世代のモデルはコストダウンが進み、至宝の如き希少性は薄れていました。
こちらも前後フード、左右ドアが開閉出来るフル可動モデルですが、グリルやホィールの造形は彫りの深さに欠け、ダンディに一歩譲ります。そうは言っても最も標準スケールに近い位置にいるブルUと言えるでしょう。
レアな車種もラインナップ ダイヤペット
ダイヤペットのブルUは 1/40です。ダイヤペットスタンダードとも言える雑なチリ合わせに加えて、厳ついボディは贅肉が付き過ぎたオバサンの腰廻りのようです。白いほうは筆者カスタムでマイナーチェンジ後の後期モデルを再現しようとしたものです。
ダイヤペットしか模型化されていない国産車は実は数多く、もう少し造形が良かったらと残念に思うモデルが多々有りますが、このブルUもその例に漏れませんでした。
レアブランド!? アポロの小さなブルU
筆者得意のチープなモデルに脱線しましょう。アポロのブルUです。大きさは1/72程度でAピラーが行方不明のジャンクです。大きさ比較用にユージン1/72の27レビンを並べています。アポロは1970年代のミニカーですが全貌が掴めない謎のブランドです。トミカより小ぶりな1/72クラスのミニカーを幾つか発売していました。
当時このスケールのミニカーは余り例を見ず、このアポロ製ブルUは永年一台だけ寂しく保管されていましたが、その後リアルXなどにより1/72が活況を呈し、今ではリアルXやホンウェルと一緒に保管されています。「これでアポロのブルUも寂しくなかろう」などと考える筆者はどこかおかしいのだと思います。
プラモデルのNIKO 1/40シリーズ
NIKOのプラモデルは 1/40スケールで上下分割のモナカキットです。ゴム動力で走る当時 50円のキットです。初代フェアレディZ、初代セリカLB、ギャランGTOと一緒に 4台でシュリンクパックされて 200円という 1970年代プラモデルの定番の一つでした。
どこか褒めてあげたいのですが、安価以外に美点が見つかりません。「こんな不人気車を模型化してくれてありがとう。」と今は無き NIKOに感謝です。
良キット 永大 1/24プラモデル
永大のプラモデルは 1/24スケール表記でしたが実際は 1/26くらいです。左右ドアが開閉できますが建て付けが悪く、ドアが下がって困るのでセロテープ止めしたら糊が取れなくなって黄色く変色してしまいました。変色を隠すために今回は不二子ちゃんに立ってもらいました。
永大は倒産してしまいましたが、永大の自動車模型の幾つかは英国のエアフィックスに金型を引取られて生き延びました。
しかしこのブルUは再生産されませんでした。こんなところでもブルUは不遇なんです。
ヤマダから童友社へ ノスタルジックヒーローシリーズ
旧ヤマダからも 1/24程度のブルUが発売され、ヤマダ倒産後も童友社が金型を引き取り「ノスタルジックヒーロー」と銘打って再生産されていました。
残念なことにこのブルUは 1/22程度と大きく、ボディ全体が風で膨らんだオバサンのスカートのようです。
完全な 1/24スケール模型にするには切ったり貼ったりの大手術が必要ですが、そんな根性がない筆者はキットのまま保管しています。
バンダイ 1/20 スケールカーコレクション
今では完全にキャラクターモデルのブランドと化したバンダイですが、昭和時代はスケールモデルを作っていました。バンダイの 1/20自動車プラモデルは意表をついた車種選択とフル可動で車モデラーを喜ばせてくれました。
トライアンフTR-7など、どう市場リサーチしたらその車種の模型化にたどり着いたのか聞いてみたくなるようなラインナップにブルUが有りました。
フル可動、充実のラインナップ バンダイの1/20 ブルU
1/20のプラモデルはブルUの冴えないところまで大真面目にスケールダウンした秀作です。
各部が開閉出来るフル可動モデルで、非力な4気筒L型エンジンが見えます。開閉部を支えているのはミクロマンのレイちゃんです。
写真はワンディモデリングが当たり前だった筆者若かりし頃の作例です。
ボディを気軽に缶スプレーで塗り、その日のうちにバキバキ作って完成させたので出来栄えは稚拙ですが、そうやって作っていた頃が一番楽しかったです。
満を持して登場のサメブルも効果なし!?
日産本店のブルUが姉に及ばす苦戦していたころ、プリンス店の従妹ケンメリ スカイラインは6気筒エンジンを搭載した2000GTが大人気を博していました。本家日産ではブルUにも 6気筒エンジンを積んで 2000GTの名前を付ければ売れると目論みました。
そうして生まれたのが、ブルU 2000GT (通称サメブル) です。写真はトミカのサメブルです。赤はホィール換装された通常品ジャンクで白はエクセレント トミカです。これもどことなくポインテアックGTOに似ています。
特徴的なフロントマスク 国産名車のサメブル
ノーズを延長してクラスの枠を超えた 6気筒エンジンを搭載したサメブル 2000GTですが、ケンメリ程の人気を得られませんでした。ハリのないふくよかボディに妙なお面を付けて厚化粧したサメブルは、彫りの深い端正なマスクにサーフィンラインが美しいスカイラインに勝ることは有りませんでした。
そんなサメブルは雑誌付録の 1/43が存在します。国産名車シリーズ (写真 : 白) と日産名車シリーズから紅白でリリースされています。名前の由来となったノーズ先端のエラも再現されています。このクラスでは他にも、ダイヤペット 1/40とLS(エルエス)の 1/40のプラモデルにサメブルが存在しました。
筆者が最初に所有した運命のブルーバードU1600
他にもアリイの 1/20 ホッドロッド仕様などブルUやサメブルの模型は多種存在しましたが割愛しましょう。お察しの通りブルUは筆者が所有した最初の車です。免許を取得したばかりの筆者は初代セリカ購入を望んでいたのですが、父親がどこかから格安のブルU 1600 SSSを入手してきて、それが筆者の最初の愛車になりました。額面 105馬力の L型 4気筒 SOHCエンジンの走りはロータリーやツインカムに遠く及ばず、御自慢のセミトレーリングサスペンションは軟らか過ぎてコーナーでも亀でした。SSS (スーパースポーツセダン) とは名ばかりの普通の車でした。ヘルメットを被っているのは筆者より 15歳年下の妹です。
まとめ
それでもブルUは 10代の筆者と青春を共に過ごしました。ボロボロのブルUはトヨタ派だった筆者を日産党に変え、それ以来 39年間、筆者は日産車を乗り継いでいます。
写真の紅白 5台は筆者が乗り継いだ 5台の日産車を再現したトミカです。ブルUのどこにそんな魅力があったのか、正直なところ筆者にもわかりません。ブルUは出来の良い姉を持った不遇な妹でしたが、スタイルや性能が平凡でも好き嫌いは別の次元にあることを教えてくれました。
筆者は異性を外観だけで選んできましたが、生涯最愛の異性は美人ではありませんでした。異性も車も外観や通り一遍の感触だけでは語れない何かがわかるようになった時に、初めて本物がわかるのだと思うのです。筆者はその領域にまだ達していません。ブルUは外観や通り一遍の感触だけで決められない何かが存在するというヒントを筆者に与えてくれた偉大な存在だったと思うのです。
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