浜松カートイズミーティング & カートイワークスのコラボ企画 第12弾のテーマは「チキチキマシン猛レース」のユルイ世界です。
チキチキマシン猛レースは1968年に米国で製作されたアニメで原題は Wacky Races です。日本では1970年代初頭にテレビ放送されていました。今回は物語に登場する超個性的なマシンたちを筆者の独断と偏見で、各社から発売されているミニカーに焦点を当ててご紹介していきます。これを読んでからストーリーを楽しめば、チキチキマシン猛レースの面白さ100倍です。
目次
チキチキマシン猛レース
レースアニメなら毎回新たなライバルが登場して主人公マシンもパワーアップという流れが定説ですが、チキチキマシン猛レースの世界では新車両の登場も無ければ、パワーアップも有りません。主人公とヒロインの燃え上がるような恋愛も勿論有りません。毎回同じ 11台の登場車両が、あの手この手でトップを目指すユルイ展開です。そんなユルイ展開のどこが面白いのか登場車両の模型から探ってみましょう。
1.スポーツカーの原点!?岩石オープン
原始人?らしき二人が乗るのが岩石オープンです。初代ユーノス・ロードスターがデビューした際に「これは岩石オープンだ!!」とレポートした記事を読んだことが有ります。余計なモノが付いていないシンプルで良い車という意味の記事でした。確かに余計なモノを排したシンプルさが岩石オープンの魅力です。
岩石オープンは人気があるらしく、コナミ (食玩)、ユージンSR (ガシャポン)、チョロQからリリースされています。大きいのがチョロQ、小さいのがコナミ、中くらいはユージンです。
2.走るお化け屋敷 ヒュードロクーペ
ドラキュラとフランケンシュタインが運転するヒュードロクーペは走るお化け屋敷です。車内には竜が住んでおり翼を出して飛ぶことも出来ます。「狼男がいないぞ!」ってそれは番組が違いますよ。
ミニカーはコナミとユージンSRから模型化されています。ユージンSRは200円ガシャポンなのでコストダウンのためにキャラクターが未彩色透明です。コナミはしっかり彩色されていますが当事の価格は300円でこれもコストパフォーマンス高いです。中国の格安人件費を背景に良質な食品玩具が大量生産されていた時代の逸品です。
3.天才博士のマジックスリー
天才発明家ドクターHが駆るのはマジックスリーです。普段は舟にタイヤを付けたような出で立ちですが、あらゆる姿に変形可能です。こうした作品の発明家にはマッドサイエンティストが多いのですが、道路や故障した他のマシンを修理する善良な天才博士のマジックスリーはコナミとユージンから模型化されています。
甲乙付けがたい出来栄えですが、軟質樹脂製のユージン (左) はカプセル内で変形しやすく、硬質樹脂製のコナミ (右) は細い部品が折れやすいと、こちらも甲乙付けにくい好勝負です。
4.大地を走る飛行機 クロイツェルスポーツ
コウモリボスが運転する飛行機のようなマシンはクロイツェルスポーツです。赤い複葉機は第一次大戦のレッドバロン、ことリトヒホーフェン男爵のフォッカーないしはアルバトロスを髣髴とさせます。
リトヒホーフェンは第一次大戦で敵機 80機を撃墜したトップエースですが、軍人のように硬直したコウモリボスの運転はクロイツェルスポーツの飛べる利点をあまり活かせず失敗ばかりでした。ミニカーを発売したのはコナミだけです。
5.日焼け対策万全 プシーキャット
紅一点のミルクちゃんが駆るマシンはプシーキャットです。日焼け対策バッチリの日傘装備です。ナレーター含めた登場人物ほぼ全員が女子に甘いのを利用して、何度も役得を得て好成績を残しました。
ミニカーはコナミに加えてジョニーライトニングから発売されていました。小ぶりなコナミに対して、ジョニーライトニングはしっかりしたダイキャスト製です。ジョニーさんは 2車種だけミニカー化するなんて気まぐれで終らないで、全 11種類を出して欲しかったです。
6.「撃てー」と命じれば「撃つー」と答えるタンクGT
軍曹閣下と新兵くんが駆るのは戦車というよりもハーフトラックに近いタンクGTです。搭載砲であらゆる敵を撃破して快進撃を画策しますが目論み通り事が運んだ例は少ないです。
マヌケな命令を出す軍曹閣下とその命令に愚直に従う新兵くんと、ほぼ全ての映画がそうであるようにここでも軍人は硬直した存在として描かれています。ミニカーを発売したのはコナミだけです。
7.ギャングセブン
トラひげ一家のギャング 7人が乗るのはギャングセブンです。今流行の 3列シート装備にも関わらず全員が前シートに乗る不思議な搭乗配列です。得意技は全員が床から足を出して地面を蹴って加速する 14本足ダッシュです。
ゴッドファーザーを思わせる禁酒法時代の黒塗りセダンをミニカー化したのはやはりコナミだけです。
8.蒸気で走るポッポSL
田舎から来たヨタローと熊八が駆るのはポッポSLです。常習の居眠り運転に加え、足でステアリングを操作するというヨタローの破天荒ぶりに熊八はいつも怯えています。田舎者の無法運転は想像を絶するという風刺なのでしょうか。
ジャンク部品に蒸気エンジンという、エコロジーのようなガラクタのようなポッポSLをミニカー化したのはここでもコナミだけです。
9.キザトト君のハンサムV9
長大な葉巻型 F-1みたいなマシンはキザトト君のハンサムV9です。世間には本当にモテる男性と、本人がモテると思い込んでいるだけの男性がいますが、どうやらキザトト君は後者のようです。
ミニカーはコナミ(右)とチョロQ(左)からリリースされています。
10.何でも真っ二つ トロッコスペシャル
木こりのドン・カッペとビーバーの甚平が乗るのは木製ボディに丸ノコギリ車輪のトロッコスペシャルです。
ノコギリ車輪で何でも真っ二つにするトロッコスペシャルは無敵のようですが、木製ゆえに火に弱いという弱点が有ります。ミニカーはコナミです。
11.悪役仕掛け人 ゼロゼロマシン
本作品の事実上の主役、ブラック魔王と愛犬ケンケンの二人が搭乗するゼロゼロマシンは主役マシンに相応しくコナミ、チョロQ、ユージン、ジョニーライトニングと今回の特集に登場した全てのブランドからミニカー化されています。
出場車両 11台を唯一コンプリート発売したコナミですが、セロセロマシンだけはレアアイテム(ブラインド販売で封入数が少ない所謂シークレット)扱いで今ではプレミア価格です。筆者は所有していませんのでジャンカークジラ氏から拝借して掲載しています。(写真左手前:ユージン、左奥:ジョニー、右手前:コナミ、右奥:チョロQ )
妨害工作仕掛け人 ブラック魔王
ゼロゼロマシンを駆るブラック魔王が毎回妨害工作を準備するために先回りして罠を仕掛けるのですが、ほとんどの罠は思惑通り機能せずに、自らが仕掛けた罠にはまるというパターンが定着していました。「先回りして罠を仕掛ける時間があるなら、そのままゴールに向かえば勝てるのに」は子供でもわかる理屈ですが、毎回ブラック魔王が仕掛ける罠がこの作品の魅力ですからそこは言わないでおきましょう。
この二人(一人と一匹?)が毎回仕掛ける妨害工作がこの作品の世界観を構築していたのです。
チキチキマシンの魅力
筆者は少年時代にチキチキマシンを初めて観て、見慣れた作品群とは違うゆるい展開に衝撃を受けました。当時のレースアニメと言えば、主人公が絶対的正義であり毎回登場する悪役を淘汰するストーリーばかりでした。しかしチキチキマシンは主役と悪役、脇役が渾然一体とした状況で各キャラの個性が毎週明確に描かれ続け、視聴者は一種の安心感を覚えながら気楽に鑑賞できる所が魅力なのだと思います。
「ブラック魔王が悪企みをしているけど、また自業自得で終るに違いない」といったあの安心感です。水戸黄門やヤッターマンシリーズの平和なマンネリズムと同類な安心感と言えば良いでしょうか。
チキチキマシンのレーザーディスク
筆者はこの作品に出場するマシンの模型を探しましたが放送当時は全く売られておらず、寂しい思いをしました。それから時は流れ青年期を迎えた筆者は普通に結婚しました。
奥様の引越し荷物のなかからチキチキマシン猛レースの LD (レーザーディスク:直径30センチもある光学式円盤を回転させる30年前の動画媒体) 全 7枚が出てきて驚きました。奥様は全話 LDを購入するほどこの作品のファンだったのです。このコラムのあちこちに出てくる画像はその LDのジャケットです。
求め続けなさい。そうすれば与えられます。
神様は人々にそう約束されました。番組放送から 30年以上が過ぎてコナミや他のメーカーからチキチキマシンが出揃い、チキチキマシンのミニカーを全種類欲しいと言う筆者の願いは叶いました。しかし神様が与えてくれたのはミニカーだけでは有りません。神様はチキチキマシンの魅力を共有できる伴侶と巡り会わせてくれたのです。
筆者は奥様が相当のアニメファンだったことを知らずに結婚しました。外観至上主義だった筆者は奥様の見た目に一目惚れして、性格や趣向を良く知る間もなく勢いで電撃結婚しました。見た目で選んで結婚したら趣向も似ていたという、そんな幸運は神様が不憫な筆者に与えてくれた最高の巡り会わせなのだと想うのです。
まとめ
11台の個性的なマシンたち如何でしたか。ちょっとマニアックなチキチキマシンのミニカーのラインナップ、ミニカーも独特でゆるーい世界観を再現してみているだけで楽しくなってきます。まだアニメを知らない方、見ていない方、次は是非チキチキマシン猛レースのアニメの世界にドップリとはまってみて下さい。
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